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レインドロップ【SS・トラパス】
 
 
【2011/06/23 10:41】
 
 
雨が屋根を打ち、窓を打つ音が響く。

どうしてか、雨音って、室内にいても耳元で聞こえているような気になる。
狭い空間に尾反響しているみたいに。
無意識に聞き入って、頭がぼうっとしてくるのが分かる。

昨日の夕方から広がりはじめた、見事なくらいの雨雲が、
今朝から大粒の雨を降らしていた。

灰色の空には、太陽の明るい光は見当たらなくて、
午前中だというのに、大きな窓の前にいてさえ、薄暗く感じる。

レースのカーテン越しに外をじっと見ているルーミィと、その側に座り込んだシロちゃんも、
退屈そうに眉を八の字にしていた。

庭に出て走り回れない、今日のような天気は、彼女たちには面白くないのだろう。
雨って、嫌いな人が圧倒的に多いもんね。

確かに、濡れちゃうのは面倒だし、泥がはねたりしたらイヤだけど、
出掛ける用事がなくて、こうして雨音を聞きながらゆっくり過ごすのは、
私はそんなに嫌いじゃない。

温かいお茶の仕度をしながら、クレイが昨日八百屋のおばさんにもらってきたりんごを切り分けていく。
クレイの人気は相変わらずで、おすそ分け、とか何とか理由をつけては、若い子から、
おばちゃんにまで、ありとあらゆるものをもらってくる。

昨日のそれも、ずいぶんと立派なカゴ入りで、りんごやオレンジ、チェリー等、
みずみずしいフルーツがこれでもかとばかりに詰められていた。

「ルーミィ、りんご食べる?」

ルーミィの好きなウサちゃんカットのりんごに、旗つきの楊枝を刺した。
食べうーっ!!!と駆けてくるルーミィの眉が、八の字からぴょこんっと跳ね上がる。

果汁をボタボタこぼしながら、りんごに齧りつくルーミィを微笑ましく眺めながら、
みんなもそれぞれにお茶をすすった。
キットン特製の薬草茶は、少しスパイシーな香りがするけれど、ほっとする柔らかい味だ。


向きや強さの変わる風の指揮に合わせて、不規則に音色が変化する雨のオーケストラ。
窓を打つ横降りの重たい雨音が、しとしとと静かに屋根を打つ音へと変わった。
長雨になる前兆のように。

「つまんねーなー。」

組んだ腕を枕に、三人がけのソファを一人で占領しながら、トラップが子どもみたいなことを言う。
小さく足をバタつかせて、駄々をこねる姿は、何だかルーミィそっくりだ。
カーペットの上で、ルーミィがはしゃいでトラップの真似をする。

「もうっ!ルーミィが真似してるじゃない。」

軽く叩くフリをすると、トラップはいじけたように舌を出した。
ちぇっ、なんてわざとらしく言いながら、うだうだと何度も寝返りを打つ。

それを見たルーミィが、きゃっきゃっとカーペットの上を転がっている。
寝そべっていたシロちゃんが、ルーミィに押しつぶされて、ぎゅぅっと変な声を出した。
側でのんびりあやとりをしていたノルが、ルーミィをそっと抱え起こす。

クレイとキットンは、午後から雨の中忙しくバイトに出掛けていった。
トラップはせっかくのお休みなのに、雨ばかりのパッとしないお天気で、退屈なのかもしれない。


窓辺に額を寄せ、外を見やると、高いところから一つ一つ伝い落ちて寄り集まった雨粒が、
曇った窓ガラスに綺麗な直線を描いていた。

楕円の雨粒越しに若木の緑が見える。
角度を変えて見てみると、何だか綺麗なガラス玉みたいだ。
観光地でお土産に売っているような、花や、砂、ジオラマを閉じ込めたガラス玉。

「こうやって見みると綺麗じゃなーい?」

足もとにくっついてきたルーミィの頭を撫でてあげる。

「うん、きえーっ!」

雨粒の色を映して、キラキラと瞳を輝かせたルーミィは、嬉しそうに両手をついて窓にはりついた。


「そうだっ!!」

ぼんやりとガラス玉のような雨粒を見つめているうちに、ふと思いついたんだ。
突然ポンっと手を打った私に、みんなの視線が集まる。
ルーミィが、そうあ!と叫びながら、ポヨンと手を叩いた。

台所のキャビネットをごそごそやり始めた私に、ルーミィが興味津々でまとわりついてくる。
お砂糖ポットと、キットン特製のお茶の葉、果物を集めて、テーブルの上にホイルを敷いた。

「ルーミィ、フルーツの飴作ってあげる。」

ルーミィは狂喜乱舞して、ベッコウ飴を作りだした私の足もとを、パタパタと走り回っている。
後ろからやってきたノルが、そっとルーミィを腕に抱え上げてくれた。
飴って高温になるから、意外と危ないんだよね。

一口大にカットしたフルーツをホイルに並べてもらっているうちに、お砂糖と水を火にかけた。
すぐにフツフツとして、甘いいい香りがしてくる。

興味をひかれたのか、よほど退屈だったのか、トラップまでやってきて、
手伝うでもなく、椅子に座ってその様子を眺めている。

薄い琥珀色の綺麗な飴が出来上がると、熱々の飴をフルーツにかけていく。
透明な飴に閉じ込められたいちごやチェリー、細かく刻んだお茶の葉。

「こうしたら、向こうの景色を閉じ込めた雨粒みたいでしょう?」

目を輝かせたルーミィが、るーみぃーもー!!と騒ぐので、
ノルに手伝ってもらって、カットしたフルーツに飴をかけさせてあげた。

ルーミィったら、大喜びで、欲張ってたくさん集めたフルーツに、
めいっぱいの飴をかけちゃって、大きな歪んだペロペロキャンディみたいになってしまった。

へたくそー!なんてトラップが意地悪を言うもんだから、
ルーミィはノルの腕のに抱えられたまま、ポカポカとトラップを叩こうとする。

「もう!いいじゃない。好きなものを、好きなように入れて作るものなんだから!」

呆れてたしなめると、トラップは黙って肩をすくめ、
機嫌を直したルーミィは、クレイやキットンの分も作るんだーっと、張り切っていた。


そして、ルーミィの手による芸術的な飴が次々と出来上がった。
うーん、これは口に入れたら舌が切れちゃいそうだなあ…。

トラップは黙ってそれを眺めている。

「ねえ、トラップ。トラップもやってみれば?あんまり甘くないように、お茶の葉とか入れればいいし。
意外とルーミィのこと馬鹿に出来ないかもしれないよ?」

笑いながら、細かくしたお茶の葉を渡そうとしたら、いらないと片手を振った。
それでも、ノルから黙って飴の鍋を受け取ると、器用に薄くて丸い円盤型のベッコウ飴を作ってみせた。

何も入っていないシンプルなベッコウ飴だ。
せっかく何か入れると綺麗だよって言ってるのに、素直じゃないんだから。
まあ、トラップの天邪鬼はいつものことだから、今さら気にしないけどね。

冷蔵庫で冷やし固めている間も、ルーミィは数分ごとに、まだかあ?と繰り返し、
キッチンをうろうろと落ち着きなく歩き回った。
もうちょっとだよ、もうちょっと待ってね、となだめすかすのも大変だった。
(なんせ、ルーミィの飴はどれも巨大なものだから、固まるのにも時間がかかった。)



「む、ムグ…おいしいデシ。」

シロちゃんが目を白黒させながら、ルーミィ作の巨大な飴を齧っている。
口の周りにベタベタと飴をくっつけて、真っ白な毛がカピカピに固まってしまっていた。

それにも増して壮絶だったのはルーミィだ。
自分の顔の半分はあろうかという飴をなめている姿は、ルーミィには悪いけど、必死過ぎて何だかおかしかった。
口の周りだけじゃなく、アゴや両手、カットソーの袖口までベッタベタにしている。
あーあー。
時々拭ってあげるんだけど、本人はそれどころじゃないし、気休めにもなっていない。

ノルは自分で作ったお茶の葉入りの飴をニコニコとなめている。

そして、なぜかトラップは、自分で作った飴をそのままにして、
私の作ったお茶の葉入りの飴にばかり手を伸ばしていた。

「もうー、結局それ食べるんなら、自分で作ってみれば良かったじゃない。」

頬をふくらませて文句を言っても、トラップはどこ吹く風という感じで、
んー、といい加減な返事をした。

「好きなもんを、“好きなように入れて”作るもんなんだろ?」

トラップは手製のベッコウ飴を、人差し指と親指で挟んで弄んでいる。
レンズのように目の位置にかざし、角度を調整するような仕草をしている。
私が窓の雨粒の向こうに、若木を見ていたように。

薄い琥珀色のレンズ越しに、トラップの左目がこちらを見ていた。
拡大されているわけでもないのに、パチパチと瞬く様が、やけにはっきりと見てとれた。

「?」

視線の先を探して振り返ると、窓際のレースカーテンと曇った窓ガラスが、
微かな午後の陽を浴びてぼんやりと光っていった。


「…なんでもねえよ。」

トラップは何だか微妙な表情を浮かべたまま、ベッコウ飴を口に放り込んだ。


しとしとと降り続く雨は、当分止みそうもない。







■投稿者:美月 『Brightest Antares 』
■投稿日:6月21日
■作者コメント:
ヘタレなトラップ再び…(苦笑)欲張ってお題を二つ練りこんでみました。
雨が嫌いな人って多いですが、私は嫌いじゃありません。それをパステルに無理やり投影してしまいましたが、雨嫌いって本編でひょっとしたら言っていましたっけ?もし齟齬があっても、ご容赦を…(汗)
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